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番外編 12月
12月初めの日曜日、喫茶店までの道を一人で歩く。見慣れた総合運動公園が見えたところで名前を呼ばれた。
「桜子」
いつものスーツ姿でない竹野内さんが寒さを感じさせない爽やかさで手を上げる。
「おはようございます。お仕事?」
「ああ、どうしても気になった事があって1時間ほど会社にいた。西野さんは?」
「今日は朝から教会に行くって」
「まだ続いてるのか…」
「思うところがあるんだろうけど…作家先生の頭の中はよくわからない、ふふっ」
京都から帰って以降、賢祐は神社仏閣と教会に頻繁に足を運び、説法や講話を聞いてくる。私が嵐山の河川敷で‘死にたいこともあったが今は幸せ’と言ったのが彼の死生観を刺激し見直すきっかけとなり、様々な話を聞きたくなったと。そしてそれは次なる作品へ投影されるようだ。
「次は桜子が最後まで読める作品かどうか楽しみだな」
そう言いながら朝から何も食べていないらしい竹野内さんと一緒に店に入る。今日も珈琲の香りと静かな空間に迎えられ、穏やかな1日が始まる。
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