西野賢祐

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 俺の人生はこれまでにいろいろ変化があった。物心ついた時には母と二人暮らしで父親を知らない。だが、4歳の時に父親と兄が出来た。優しい父親と12歳年上の兄が同時に出来た。その頃からの記憶、思い出は沢山ある。高校生だった兄は、俺を邪魔に扱うことも面倒な顔をすることもなく、いつも穏やかに接してくれた。  俺が6歳になる前、母が癌で亡くなった。後で聞いた話では、父と兄は母の余命を知っていながら俺たちの家族になってくれたという。二人は母を亡くした俺が寂しがる暇がないくらい俺に構ってくれた。当時も今も、母が亡くなった悲しい記憶はほとんど無いのは父と兄のおかげだ。  その兄が5歳年上の女性と学生結婚をし、兄20歳、俺が8歳の時に生まれたのが桜子だ。兄夫婦は、俺と父が暮らす家のすぐそばにアパートを借り、常に往き来し、まるで5人家族で暮らしているような日々が俺の高校卒業まで続いた。  俺が関西圏の大学へ進学した1年後、父が自分の役目を終えたかのように突然、母の元へ旅立った。  この父の死をきっかけに、俺は趣味で書いていた小説を、人間の死生観を加えて完成させ、それがその年の新人賞を獲ることとなった。
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