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中学の卒業式を終えた夜、父と母は二人のお気に入りだというレストランへ私を連れていってくれた。少し大人びたお洒落な空間に満足しながら、美味しいお料理をいただく。これが私の両親との最後の晩餐になるとは誰も知ることなく、すぐに始まる新しい高校生活に思いを馳せ、楽しい時間を過ごした。
9時前にレストランを後にし車で帰宅中…心臓疾患により意識を失った運転手を乗せた暴走車が対向車線から加速しつつ父が運転する車に向かってきた。突然のことに成す術もなく、車は暴走車と電柱に前方が挟まる形で大破。両親は即死、後部座席の私は左足の複雑骨折、左腕にガラス片による切創と刺傷、全身打撲等の重傷を負った。
手術入院となった私が麻酔や痛みで意識朦朧な状態を繰り返す間に、賢祐が両親のお葬式を済ませてくれた。
私は脚の手術を2年間で3回受け、リハビリを終えるまでには更に1年を要した。もちろん高校へ通うことは出来ず、通信制高校で高校卒業資格を取った。スクーリングへは車椅子で行くこともあり苦労はしたが何とかやり遂げた。
苦労したのは私よりも賢祐の方で、私が弱音を吐けないほどに彼が疲労していた日もあった。あの事故の日から私の身の回りの世話はもちろん、事故の事後対応、二人で暮らす準備等ありとあらゆる事を彼がやってくれた。
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