西野賢祐

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 書き始めると家の事が桜任せになってしまうのは、いつも申し訳ないと思いつつ、桜に甘える形で今日も夕飯を任せ風呂に入る。部屋着を手に風呂へ行こうとすると、またポケットのスマホが震えた。しつこいな…もうそっちの話は終わって、こっちは書き始めてるんだ。用があればメッセージにしてくれ。どうせ無駄話だろ。スマホや財布を部屋に置き風呂に入った。 「おっ、いい匂いだ」  頭をガシガシ拭きながらダイニングに行くとチーズの焼ける匂いが漂う。 「もう出来るよ」  桜はまずグリーンサラダとオニオンスープをテーブルに置く。そこでちょうどオーブンが音をたて、彼女はいい匂いの元を取り出した。 「なんちゃってドリア。はい、食べよう」  桜のいう‘なんちゃってドリア’は耐熱皿にご飯、昨日のハヤシライスの残りをかける。そしてチーズを乗せて焼くのだ。彼女は手抜きだと言うが、加熱用のチーズだけでなくパルメザンチーズとパン粉をかける一手間で香ばしく、いつも美味しい。 「ありがとう、いただきます」  手を合わせてからスープを一口飲み、チーズにサクッとスプーンを入れる。熱々のドリアをふーっと冷まして…まだ熱々なのだが我慢できず口へ運ぶ。 「ぁっつ…ぅまい」  熱さに口をもがもがさせながら言うと 「あはは、よく食べたね…まだ無理じゃない?」  スプーンにドリアを乗せたまま笑う桜に、頷きながらも   「熱いから旨いんだ」  二人でゆっくり食事を済ませ一緒に片付けると 「じゃ、隣行くわ」 「うん、無理なく頑張ってね」 「おう。明日ちゃんと起こしてくれよ」   「はーい、いってらっしゃい」
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