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振り返ると、顎ラインまでのアッシュグレーの髪に真っ赤なリップが目立つ小柄な女性がいた。全く見覚えがなく
「…どちら様ですか?」
恐る恐る聞いてみる。
「あなた賢祐のところの桜さんでしょ?私は藤井マミです」
ああ、この人がマミさん…私のこと知っているの?
「なんで知ってるの?って顔ね。あなたが手術入院で大変だった数年、賢祐はもっと大変だったわよね?仕事をしつつあなたの世話を何から何までしていたんだもの。賢祐から聞いているわ」
えっ…私のそんな事まで知っている…どうして?私の戸惑いは伝わらず彼女は淀みなく話す。
「その一番大変だった時の賢祐を心身ともに支えていたの、私。仕事面でもサポートしたし…もちろん若い彼の欲も満たしたわ。あなたの入院中…ふっ彼も私も若かったから一晩中でも飽き足らず昼まで何度も何度も抱きあい、午後病院に顔出してくるって彼が急いでうちを出ることもあったわ」
彼女は声のトーンを変えて言う。
「桜さん、あなたいつまで賢祐に頼るつもりなの?もうケガも治っているでしょ?彼を解放してくれないかしら、今すぐ」
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