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「こんばんは。ご挨拶は後程。曽根、心花(このか)の個室」
勇平は車を出しながら、料亭の個室を取るように指示する。
「桜子、寒くない?」
俺がそう聞くと、止まりかけていた涙をまたはらはらと落とす桜子に戸惑いながら、繋いだ手はとても冷たかった。
「もう大丈夫だから、大丈夫」
そう言いながら繋いだ手を擦り続けた。
「着いたよ、降りよう」
二人分のシートベルトを外し手を引く。桜子はされるがままに付いてきた。
女将にはお茶だけ頼み、また後で呼ぶと伝え、お茶も部屋の入り口に置いてもらい曽根が入れる。彼女が桜子の前にお茶を置くと
「ありがとうございます、曽根さん」
「いえ、桜子さん。こちら橘です」
「…はい、えっと竹野内さんの従兄弟さん…でした?」
「そうです、はじめまして。桜子さんとお呼びしても」
「はい」
幾分か落ち着いたように見える桜子に穏やかに聞いてみる。
「何かあったんだろ?話せる?俺は桜子の力になりたい」
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