西野桜子

1/3
前へ
/175ページ
次へ

西野桜子

「どう思った…」  竹野内さんたちには、事実のほんの一部を話した。賢祐と私が血の繋がりがないというのは、賢祐の幼少期を勝手に話せないと思い伏せた。竹野内さんの問いに続き、橘さんが口を開いた。 「そうです。いつものように帰れないという気持ちになったのは、どう思ったからですか?あー、桜子さん。丁寧に話してると尋問みたいだよね…これでいい?」  言葉を崩した橘さんに頷くと 「私もいい?」  曽根さんにも聞かれ答える。 「はい」 「きっと、いろんな事考えたんだよね…急に面識のない人に名前呼ばれるだけでホラーだもんね」 「順序だてなくていいから、考えた事、思った事、教えて」  竹野内さんに言われて思い切って話した。 「私、あの事故のあとリハビリが終わるまで叔父と二人の生活で、そのあと今の喫茶店が加わって…それだけの穏やかな生活で十分満足だってずっと思っていて、変化はもう…怖いだけですし」  3人を見ると真剣に聞きながらも、ピリピリする事なくゆっくりと話を促されている気になる。 「でももちろん、別々に生活しないと…自立しなきゃって考えたことも数えきれないほどあります。でも急に…知らない人に言われて…しかも…」
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3947人が本棚に入れています
本棚に追加