西野賢祐

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西野賢祐

「ほら、眠いでしょ?クスッ」  歩きながら欠伸をした俺を小さく笑いながら見上げる桜に 「この日課がないと生きていけない」  と言う。さらにクスクス笑った彼女は 「生きていけない、は大袈裟ね…まあ賢祐の1日は始まらないかも」  自分が起こさないと俺が起きられないと思っている桜に、本当はいつも先に起きているとは言わない。ただ…桜を朝まで抱いた日に俺が先に起きていることは不思議には思わないようだ。  寝ている振りを起こしてもらい、一緒に朝食をとり、桜を勤め先の喫茶店へ送って行くのが俺の日課だ。一人で行くという彼女に‘生きていけない’などいろんな理由を付けてついてくる…そう、送るのではなく‘ついてくる’んだ。  桜が傷だらけだったあの日から、こうして一緒に歩ける日常は想像できなかった。だから、桜が今日も自分で歩いていることを確かめるように一緒に歩く。  可愛い姪、西野桜子…この世で俺の愛するたった一人。
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