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翌日、遅れてやって来た真由が、私の顔を見るなり
「百合、良かったね。」
と言った。先週、真由が涙の懺悔をしたカフェレストランで今夜も落ち合っている。
「なんで分かるの?」
「顔見れば分かるよ。分かりやすすぎ。」
「そんなに?」
「田島の腕、たくましかったー、とか思ってるのがだだ漏れてる。」
「嘘でしょっ!?」
「うん、嘘。でもそう思ってるんだ。」
真由がニヤニヤしながら、メニューを開く。
「久しぶりにピザ食べよっかなー。」
「真由。」
「なんだい?田島に食べられた百合ちゃん。」
「なんで時々、言動がオヤジっぽくなるの?」
「そんなこと聞きたかったの?」
「ううん。反射的に言っちゃっただけ。特に聞きたいわけでもない。」
「あら、そ。」
真由が私にメニューを渡す。迷った挙げ句、結局、真由につられてピザを頼むことにした。
「で、本当の質問は?」
「実際はどの辺りまで、だだ漏れてる?」
「私は事情知ってるから、うまくいったのかなーって思うけど、なんにも知らない人は機嫌いいなー、くらいじゃない?」
「そっか。」
真由が笑う。
「実際はどうだったの?」
「付き合うことになりました。」
「やっぱり!おめでとう!」
「ありがとう。」
なんか、照れる。予想以上に喜んでくれる真由を見ていると、危うく涙が出そうになる。
「え、泣いちゃうの?」
真由が驚いた顔で聞いてくる。
「え、泣いてる?」
私はあわてて自分の頬を触ると、確かに涙が流れていた。泣きそう、からの、泣いちゃった、が早すぎて自分でも気付かなかった。
「そうか、そうか。そんなに田島と付き合えて嬉しいのか。」
真由がニコニコしながら頷く。
「違うの。」
「違うの?泣くほど嫌になっちゃった?アイツ一晩で何やらかしたの?」
「そうじゃなくて、真由への感謝の気持ちが抑えられず・・・ 。」
私はティッシュをだして、ズズズーっと鼻をかむ。
「え?私?感謝?」
「うん。あと申し訳ない気持ちも。」
「全く話が見えない。」
真由が困ったように眉を下げる。
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