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「真由、人を好きになる気持ちって大事って言ってたでしょ。私、正直、良く分かってなかったんだけど、今回、すっごくよく分かった。」
「そっか。」
真由が微笑む。
「そしたら色々なこと感じて、考えて。今まで自分が、周りの人にすごく受け入れてもらって、支えてもらってたんだって事に気づいた。」
「そっか。」
「私、そういうこと全然分かってなくて、嫌なやつだったなぁって。それなのに、真由は私のこと自分のことみたいに喜んでくれて。」
また涙が出てきて、私はズズズーっと鼻をかむ。
「ちょっと、やめてよ。」
真由が笑い出す。
え?鼻かむ音、そんなに大きかった?
「百合のどこが嫌なやつなの?嫌なやつだったら友達にならないよ。」
「そうだけど・・・。」
「周りの人に受け入れてもらって、支えてもらってるのも、普段それ忘れがちなのも、みーんな同じじゃない?」
真由がニッコリと微笑む。
「お互い様でしょ。私だって百合に受け入れてもらって、支えてもらってるし。」
また、涙が溢れる。鼻、かんでもいいですか?
「恋するとさ、一気に感情豊かになるから、色々考えちゃったりするよね。」
「私の場合、ちょっと事情が違うというか、人と違うから、そういう感情の起伏的なものではない気がする。」
能力に慢心してた部分があるから・・・。
「あー確かに。それは言える。」
「え?」
真由、もしかして気付いてるの?
「普通はこういのって、思春期に終えてるよね。」
「はうっ!」
私はどんよりと肩を落とす。
「すみません、イタい27歳で。」
「えー、全然イタくないよ。むしろ羨ましい。」
「またまた。」
「本当、本当。始めての恋ってさ、何も知らないからこそ盲目でしょ。それが何度目かの恋になると、妙に冷静な自分もいて、打算とか、駆け引きとか、色々出てきちゃうんだよね。」
「噂には聞いてます。」
「それはそれで、またいいんだけどさ。」
「いいんですね。」
「でもやっぱり、身を焦がすような盲目の恋は特別だよ。それを大人になってからできるなんて、相当羨ましい。」
そういうもの、なのかな。
「何を気に病んでるのかわかんないけどさ、百合はただ、田島との恋を楽しめばいいんだよ。もちろん嫌なやつなんかじゃないし、今まで通りで大丈夫。私、百合のこと大好きだから。」
また涙が溢れる。
「真由ざぁーん。」
「百合、鼻垂れてるよ。」
「鼻がむど、うるざいがと思っでぇー。」
「かんで。音、以前の問題だから。」
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