7

6/7
前へ
/46ページ
次へ
「もしもし、北見?」 「こ、こんばんは。北見です。」 あ、声が震えてしまった。佐々木が笑っている。 「こんばんは。田島と上手くいったんだね。」 はれ?・・・え?はい?? 「ど、どーして、わかった・・・?」 「津川さん?」 いや、違います。驚きすぎて声が掠れただけです。 「分かるよ。このタイミングで電話きたら田島のことだろうし、北見は振られちゃったーなんて電話してくるタイプじゃないし。」 「いつもながら、すごいね。」 「そうかな。」 「・・・ええっと。」 言う前に、要件が終わってしまった。どうする?もう切る?いやいや、私、津川さん的掠れ声披露しただけなんだけど。 「伝えてくれてありがとう。」 佐々木の優しい声が聞こえる。 「いや、正確には伝えられなかったけど。」 「あ、そっか。俺が言っちゃったね。ごめん。」 ははは、と笑っている。 佐々木、なんでそんなに優しいの?なんでそんなに強いの? 「はあー、俺明日から生きていけるかな。」 「え・・・。」 強くはなかった? 「聞いてくれる?俺、惚れてる子がいるんだけど、その子、先週、好きな奴できて、今週にはもう付き合い始めたんだって。展開早すぎだろぉ。こっちは振られるの恐くて4年も身動きとれずにいたのにさぁ。」 「それは・・・、災難でしたね。」 「俺はこれから大逆転狙うぞっ!て気合い入れたところだったのにさ。」 「・・・そっか。」 「でも、ちゃんと報告してもらったから、よしとする。」 「え?」 「このまま放っておかれて、忘れ去られたらどうしよう、って思ってた。」 「そんなわけないよ。」 「うん、北見がそんなことするわけなかった。でも、そんな当たり前のこと分からなくなるくらい、どうしようもなく北見が好きなんだ。」 「・・・うん。」 「好きだよ。」 「・・・うん。」 「大好きだ。」 「・・・うん。」 電話で良かった、と思う。今、目の前に佐々木がいて、顔を見ていたら、震える声の理由を見てしまったら、私、間違った優しさで、間違ったことをしてしまいそう。そして、佐々木を傷つけるに違いない。 「しつこくて、ごめん。明日からは、もう言わないから。」 何か言わなきゃと思うけれど、なんと答えればいいのか分からず、黙ってしまう。 「大好きだよ、北見。」 「うん。」 「田島のことは嫌いになりそう。」 クスリと笑うと、佐々木もフッと笑うのが聞こえる。 「ちょっと時間かかるかもしれないけど、俺、ちゃんとこの気持ち消化するから。」 「うん。」 「そしたらまた、同期として仲良くしてよ。」 「こちらこそ、お願いします。」 「大丈夫そうって思えたら、シラーっとみんなの輪の中にもどるからさ。そんとき笑うなよ。」 「笑わないよ。」
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

156人が本棚に入れています
本棚に追加