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佐々木が、あーあ、と伸びをしているような声をだす。 「北見と公園でアイス食べた時、キスくらいしとけば良かったな。」 「ちょっ、なに言ってるの?」 「いや、何回か思ったんだよね。北見隙だらけで、しようと思えばいくらでもできたから。」 「いくらでも・・・?」 「うん、いくらでも、何度でも、どんな風にも。」 「怖い。」 「あは。」 あは、じゃないよ。さっきのメソメソはどこ行った!? 「そろそろ、家着いた?」 アパート前の公園に差し掛かったところだったので、思わずビクリとしてしまう。 「佐々木って、何かの能力者なの?」 「何それ。」 「何でもお見通しだから。」 「いや、なんとなくだよ。北見の声と周りの音が、外歩いてる感じだったから、家に帰る途中かなーっ、駅からだったら、もうそろそろだなーって。」 「すごいよ。佐々木に比べたら、私はどんだけぼんやり生きてるんだろう。」 「じゃあ、最後にかっこつけると、夜道を一人で歩いてるなんて心配だな、家着くまでは電話切らずに送り届けよう、とも思ってた。」 「ありがとう。」 「いいんだよ、好きだから。」 「グッ・・・。言われすぎて、顔が熱いです。」 「言い納めだからね。気が済むまで言っとかないと。」 玄関前に到着し、立ち止まる。 「着いた?」 「着いた。」 「そっか。残念。」 「・・・。」 「もうちょっと話していたかったけど、かっこわるいからやめる。」 「・・・佐々木。」 「ん?」 「ありがとう、送ってくれて。」 「電話だけどね。」 佐々木が、ははは、と笑ったあと、黙る。 しばらくの沈黙の後 「じゃ、また。」 と静かに言った。 「うん、またね。」 私は答え、ゆっくりと終話ボタンを押した。
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