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視線の先に田島が現れ、手を振っている。私は、テイクアウトで買っておいたコーヒーと紅茶を持って、店を出る。
「悪い。車借りるの手間取った。」
田島がきまり悪そうに笑う。
「ワクワクし過ぎて、待ってる間も楽しかったから大丈夫。」
「かわいいこと言うねぇ。」
田島が私の肩をトンっと押す。
「わわ、お茶こぼれるよっ!」
睨みつけると、イヒヒ、と笑って私の手から荷物を取り、歩き出す。私はその後ろ姿をみて、荷物持ってくれるの?優しい!好き!、とニヤける。
ああ、イチャつくバカップル。前は大嫌いだったけど、自分がなってみると、ただただ、幸せですなぁ。
駐車場に停まっている車の一台に近づき、田島がロックを解除する。
わーい、今日は田島の運転姿見られるー。
私は心躍って、思わず体も小さくジャンプしてしまう。
「子どもかよ。」
田島が吹き出す。
「だって、田島の運転姿見るの初めてだもん。」
「あ、そっち?」
田島が照れたように、片手で口を押える。
「ま、仕事でも乗ってるし、安全運転だから、ご心配なく。」
「うん。心配してない。」
私はいそいそと助手席に乗り込み、シートベルトを付ける。田島が、ドリンクホルダーにコーヒーと紅茶をセットする。そのついでに、私の方に体を傾け、キスをする。
「密室に入ると、つい、な。」
「密室バンザイ。」
私がニッと笑うと、田島も笑い、もう一度キスをする。
「やばいな、出発できないまま日が暮れる。」
「それは、いや。」
「へいへい。」
田島が運転席に体を戻し、エンジンをかける。
ドライブデート。また一つ、初めての体験。
まだまだ、楽しいことが私たちを待っている。
きっと田島となら、なんだってできる。
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