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それから おひさまが 空にいる時間が少なくなり 空気も冷たくなってきて
うろこ雲が 空に広がる秋
「やぁ、ごきげんよう」
ありさんが わたしのところにやってきた
「こんにちは ありさん」
「もうすぐしたら 身も凍える 寒くて長い 冬がやってくる。夏の間 元気がなかった きみのことが心配で 様子をみにきたんだ」
ありさんは わたしの小さい 葉に座って
「しばらく会えなくなるからね。こうやって挨拶回りをしているんだよ」
「え?会えなくなるって?」
「冬の間 外は寒いから ワタシたちは 土の中で冬を越すんだよ」
「そうなの。わたしは その寒くて長い冬を 越すことができるのか 自信が無いわ」
「そうだね 冬は 雪も降るし 本当に寒い。けれど きみは ワタシたちから見ると 大きくて この葉で ワタシたちを 雨宿りさせてくれた。風からも守ってくれた。礼を言わせてもらうよ」
「こんなに 少なくて 小さい葉なのに お礼なんて……」
「きみの葉は美しい。ワタシが土に入る前に その美しい葉を もっと大きく見せてくれないかい?」
ありさんは 美しい姿を期待しているよ とわたしの葉にキスをして帰っていった
わたしは 静かに冬を待つ 周りのみんなとは反対に たくさん 葉を茂らせた
たくさん たくさん
何枚も 何枚も
「綺麗だよ とても。素晴らしい ロゼットだ」
幾日かして ありさんが 私のところにやってきた
「ありさん ありがとう。たくさん 葉を出していたら 周りのみんなも 応援してくれて おひさまの 光をつかめるように 道を開けてくれたわ。」
「きみの 明るい声が聞けてよかった。それに きみはロゼットだ。風に当たることも少ないから きっと 冬を越せるよ」
「えぇ 寒い冬と 上手く付き合っていけるように色々と考えてみたの。重なった葉でも この形の葉だったら 下の葉にも おひさまの光を当てられるでしょ? もし外側の葉が枯れてしまっても 内側の葉を覆ってくれるから 寒さから守れるわ」
「ははは!本当に きみは 魅力的だ。次に会う時は きみは 高嶺の花になっているかもしれないね。では また 暖かくなったら 会おう」
そう言って ありさんは土の中の旅へと出かけていった
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