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祐希は実家の自宅の庭に、穴を掘った。
それも直径60センチはあろう穴だった。
「ふいー、疲れたー。休憩」
首からさげたタオルも、だんだんとしっとりしてきた。
「ちょっと、ちょっと、あんた、何してんの?」
母の喜美恵が驚きながら近づいてきた。
「せっかくいい感じでまとまってるのに」
庭を見渡しながら、顰めっ面をした。
庭には、シバザクラ、シクラメン、キンセンカ、ポピーなどの花が見事に咲き誇っていた。
「大丈夫だよ。こいつを植えるためだよ」
祐希の背後に置いてあった鉢を見せた。
「なにこれ?」
「ネコヤナギ」
祐希は答えた。
鉢からさっき掘った穴に丁寧に移植した。
「こいつらの下で眠ってる相棒がこれだけ咲かせてくれたんだ。もっともっと咲かせたい」
心なしか、寂しげな目で地を見つめていた。
「お前はゆっくりでいい。ゆっくりでいいから、元気にたくましく花を咲かせてくれ」
それに応えるかのように、ネコヤナギは穂を揺らした。
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