ハナ

7/10
前へ
/10ページ
次へ
「いってぇ」 祐希は首をポキポキと鳴らしながら、電車を降りた。 短時間とはいえ、変な体勢で寝てたもんだから、首や腰が痛くなった。 未だに、電車は苦痛で仕方がない。 こういう時は、大学を実家から近いところに選んでまだ良かったなと思えた。 吾妻との約束は明日だし、今日の予定はこの電車に揺られることくらいだった。   いや、あともう一つ。 ハナに会いにきたのだ。 ハナは祐希の幼馴染みたいなものだ。 彼女は元気だろうか。 ここ1年、実家に寄ることもあったのに、ハナに顔すら見せていなかった。 心配と楽しみの狭間で、祐希はバスに乗った。 大抵公園の隅っこの木が生い茂ったところに、彼女はいる。 今日もそうだろうと、公園に着くや否や、隅を見渡す。 一角で1匹の雑種犬が横たわっていた。 「ハナ!!」 祐希は犬に駆け寄った。 かなりの勢いで駆け寄ったにもかかわらず、犬は微動だにしなかった。 ぐったりとして、肩で息をしていた。 「ハナ、しっかりしろ。なあ」 必死に呼びかけるも、はっ、はっ、はっ、と途切れ途切れに荒く呼吸するだけだった。 「なあ、何寝てんだよ」 必死にハナの身体を撫で回すも、反応はない。 この時点で悟った。 「なんでだよ、なんで」 声は続かなかった。 代わりに大粒の涙が続いた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加