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「いってぇ」
祐希は首をポキポキと鳴らしながら、電車を降りた。
短時間とはいえ、変な体勢で寝てたもんだから、首や腰が痛くなった。
未だに、電車は苦痛で仕方がない。
こういう時は、大学を実家から近いところに選んでまだ良かったなと思えた。
吾妻との約束は明日だし、今日の予定はこの電車に揺られることくらいだった。
いや、あともう一つ。
ハナに会いにきたのだ。
ハナは祐希の幼馴染みたいなものだ。
彼女は元気だろうか。
ここ1年、実家に寄ることもあったのに、ハナに顔すら見せていなかった。
心配と楽しみの狭間で、祐希はバスに乗った。
大抵公園の隅っこの木が生い茂ったところに、彼女はいる。
今日もそうだろうと、公園に着くや否や、隅を見渡す。
一角で1匹の雑種犬が横たわっていた。
「ハナ!!」
祐希は犬に駆け寄った。
かなりの勢いで駆け寄ったにもかかわらず、犬は微動だにしなかった。
ぐったりとして、肩で息をしていた。
「ハナ、しっかりしろ。なあ」
必死に呼びかけるも、はっ、はっ、はっ、と途切れ途切れに荒く呼吸するだけだった。
「なあ、何寝てんだよ」
必死にハナの身体を撫で回すも、反応はない。
この時点で悟った。
「なんでだよ、なんで」
声は続かなかった。
代わりに大粒の涙が続いた。
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