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「ハナ・・・・・・!」
祐希は鼻水を流して泣きじゃくった。
腕の中のハナは目を瞑っている。
こうなることは、少し考えれば予想できた。
無意識のうちに、考えないようにしていたのかもしれない。
なぜもっと会いに来なかったのか。
どうしようもない後悔を抱えて、声を漏らしながら泣いた。
それを嘲笑うかのように、太陽の光が祐希を差していた。
埋めようのない生物間の時間の差に絶望した。
「お兄ちゃん、何で泣いてるの?」
気づかなかったが、どうやら見られていたらしい。
小学校低学年くらいの男の子が立っていた。
「相棒に置いていかれた」
そう言って、鼻を啜った。
「ふーん。あ、これあげる」
少年は小さな手のひらに、飴玉を5つほど広げて見せた。
あまりにも大胆な泣き方をしていた祐希に同情したらしい。
「ひとつだけだよ」
小さな牽制をかけてきた。
「さ、さんきゅ」
少しだけ戸惑いながらも、黒糖飴を指で摘んだ。
「ばいばい」
少年はすたこらと、駆け足で公園を出て行った。
少年の登場によって、多少は気が紛れた。
下を向くとまた涙が止まらなくなるから、前を向いた。
そして、黒糖飴の包装を剥いで口へ放り込む。
「ジジくさっ」
小さな頃によく食べた、そのジジくさい味がまたよかった。
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