江藤主任は謝ったら死んでしまう病にかかっているらしい

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江藤主任は謝ったら死んでしまう病にかかっているらしい

「え、そんなのメールに書いてあった? 書いてないでしょ。ほら、見て見てこれ美里ちゃんのメール」  江藤主任は、デュアルディスプレイにしたモニターをこちらに向けてきた。見せられているのは、確かに私が送ったメール。だけど、それ最初のメールです。そのあとに追記メールを流しているし、リマインドメールも流してるんです。ついでにいえば、昨日の部内会議でも発言してるんです。 「すみません、最初に送ったメールは締め切りの記載が漏れてました」 「はあ? メールは出す前にちゃんとチェックしないと」  ため息交じりで言われる。が、その後のメールや発言をことごとく見逃しているくせに、どの口が言う。 「私のメールが分かりづらくてすみません。ですが、昨日が締め切りで……。江藤主任の担当エリアの分の報告書が揃い次第、本社に送信しますので」  暗に、出してないの江藤主任だけですよ、と言ってやる。 「仕方ない、美里ちゃんのために今日中に提出するよ」 「お忙しいですよね、すみません。でも午前中まで、ってのは難しいですか?」  何せ私なら五分でかける報告書である。ついでに言えば、彼のデュアルディスプレイのもう一つには、Googleとデカデカかかれたトップ画面だけが表示されている。メーラーは私にみせるために起動したようだったから、お前まじ始業から今まで何してたんだよ。 「忙しいんだけどなあ。仕方ない、昼休み潰してやるか」  いま九時半ですよ。パソコンにGoogleしか上がってませんけど、昼まで寝かせるんですか? て言うか、私が五分で書きましょうか。 「助かります、ありがとうございます」 「今回だけだぞ」  私が言葉だけでもお礼を言うと、満足した主任はふんぞりかえりながら言った。  それはこっちのセリフです。先輩だからってあんまり調子にのってると、その無駄に見た目だけ整えた空っぽの頭にコーヒーぶっかけますよ。 「ありがとうございます。以後、気をつけますね」  にっこり笑って席を離れる。  わかってます。  私たちがこうやって甘やかすから、こういうのが会社に大量発生するんですよね?
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