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「お母さん、亡くなって……もう、十年……だっけ」
「うん、もう十年。そんなに経つのに、全然進んでないんだ、私。ママとの約束すら果たせてなくて」
「美里は悪くないよ。やっぱり言うの辛いんだよね。ほら先刻は、あんな流れだったら滝下君に言えるかなって、勝手に考えたから……でも言えないよね。ごめんね」
私は親友の沈んだ瞳を見て慌てた。
「灯が謝るのは違うよ。私は大丈夫だから、ね。ただ、何て言うのか……言ったらその人を失ってしまう気がして、怖いんだ」
灯は真正面から私を見据えた。
「でも、何時か越えられるよ。何しろ美里は私の親友なんだから」
「そうだよね、何か灯がいたら行ける気がして来たよ」
「でしょ?」
私達は口角を上げ、ニンマリとした笑みを浮かべてグータッチを交わした。
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