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小吉の地縛霊
西奈良村の赤崎に建つ岩崎の屋敷の少年から聞いた怪異ーーー
少年は岩崎家の末裔に当たるが、一世代前に岩崎家には京子と云う娘があった。
京子は所謂視える人だった。
京子は小さい頃、屋敷が建つ丘陵の麓の沢を遊び場にしていた。
沢では蛙や沢蟹が捕れ、多感な年頃の子供の好奇心を満たしてくれたのだ。
沢は支流で、大きな川ーーー巴川と合流していた。
巴川とは、件の岩崎の、新田義貞の弟の娘が、河童に殺された川だ。
ある日京子が蛙捕りをした帰り、丘へ登る山道の登り口に赤い人影と出会った。良く視ると、それは、自分と同じ年頃の少女だ。
京子は、少女に話し掛けた。
「あんた、誰?こんな所で何してるの?」
人影は、自分は小吉と云う岩崎の家の娘
だと云う。
お前こそ、何をしていた?と聞くので、
「蛙捕り」
「近所の友達と遊ばないのか?」
「遊ばない、イジメッコばかりだから…」
それから、京子は沢ではなく、登り口の少女に会いに行く様になり、赤い少女とばかり遊ぶ様になった。
そして…巴川では、近所のイジメッコが足を引かれたり溺れたりする様になった。
ある日、誰かが、巴川にこんな看板を立てた。
「小吉ちゃん、もう止めて」
すると、子供の水の事故もピタリと止んだと云う。
それから20年、近く、看板は撤去されると云う。
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