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「また人形か」 「ああ、今度も上から落ちてきよった。この浴室の上にでも置いてあったんやろ」 「誰がそんなことを…」 「うわっ、よう見たらこの浴槽の中に、びっしり詰まってんで、人形が」 「誰がそないなことを…」 「ああ、もう気味悪ぅてしゃあない。すまん宮上さん、一旦出るわな」 「その宮上さんのことはどないすんねん」 「やっぱり、警察に言うべきやろ。あん時、警察は全く取り合うてくれんかったけど、こんだけのモンがあれば、流石に動かざるを得んやろ」 「せやな…」 「あっ、また音すんで。下からや。ちょっと静かにせぇ」 「…」 「今度は、何かが落ちるみたいな音や。ああ、もう怖いわ」 「やっぱり、その家は普通やないねんて」 「…せやな。もう五年も経ったら大丈夫やろ思たけど、寧ろ悪化しとんのかもしれへん。訳の分からん人形やら何やら…いや、せや言うても、俺は五年前、俺は荷物運んだ時から違和感は感じとったで」 「やっぱり、もう帰った方がええんとちゃうか」 「ああ、俺もそう思てたところや。せやけど、さっきから一階で変な音してるしやなぁ…」 「そうやな…ん?何の音や…?」 「浴室の方から…うわっ!何や、何やねん、お前ら」 「おい、どないした」 「ぎゃああああ!えらいこっちゃ!」 「おい、何が…」 「来んな、何やねん、お前ら…!」 「おい、どうした、凄い音したけど…」 「ドアを閉めたんや。あの人形が、浴室から出てきよった」 「何を言うてんねん、それはほんまなんか」 「ほんまや。懐中電灯でパッと照らしたら、のそのそと出てきおったんや。ほんで、あの片目が、何やおかしな色を…」 「…やっぱり、その家…」 「下からも何か聞こえるで。もしかしたら、下の人形も…」 「動き出すっちゅうんかいな」 「ああ、もうどないしたらええねん。やっぱりこんなとこ入るんやなかった」 「兎に角、早う逃げた方がええ」 「逃げ言うても…あっ!あかん、階段の方まで…」 「おい、大丈夫か?」 「くそっ!こうなったら…」 「おい、どないした?」 「…」 「どないした、大丈夫なんか?」 「…」 「おい、おい」 「…」 「何があったんや、何か返事せえ、頼むから」 「…」 「おい、どういうことや」 「おい、どういうことや」 「…」 「おい?何があったんや」 「パパ。何でここにいるの?」 「何や…?」 「ねえ。パパ達はどこに行っちゃったの?」 「誰やねんな、お嬢ちゃん」 「どうして戻って来てくれなかったの?」 「だから、そないなこと言われても…おい、田村。どないしたんや、田村」 「ママはあんなに優しいのに、パパがおかしくしたんだ」 「お嬢ちゃん、そんなん俺に言うたかて…すまんけど、田村に代わってくれへんか?」 「どうして私を置いていったの?」 「ああ…あかん、あいつらこのドア破る気なんかいな」 「パパはいつから私を嫌いになったの?」 「えらいこっちゃ…ここのドアがやられてもたら…」 「もう会えないの?ずっとこの家で一人で待てばいいの?」 「くそっ…もうやられるしかあらへんのか…」 「何でパパはあんなおかしな目をしてたの?」 「あかん、懐中電灯まで切れてもうた」 「どうしてあんな怖い顔をしてたの?」 「…ん?ここやったらいけるんと違うか」 「ママと何を話してたの?」 「よっしゃ、これでひとまずは安心や」 「どうしてあんなものを持っていたの?」 「ほんで、お嬢ちゃんはどないしてんな、さっきから」 「それで、ママを連れていったの?」 「どないしたんや。いっぺん落ち着き」 「パパはあんなにママのことが好きだったよね?」 「すまん、そんなん言われても、俺には分からへん。ちょっとでええから、田村に代わってくれへんか?」 「…」 「もしもし…?」 「あっ、私の人形に触らないで」 「あかん、ついにあいつら部屋に入ってきよったで」 「パパ?やめてよ。何するの?」 「こっちやったら、ここから隣の部屋に繋がっとんのか」 「それ私の大事な人形だよ?なんでそんなことするの?ねえ、おかしくなっちゃったの?」 「よっしゃ、こっちの扉開いとんで」 「やめて、ねえ、ママ呼ぶよ?」 「よし、何とかこれで…」 「ねえ、何してるの?ほんとに止めてって言ってるよね?」 「おい、そろそろお嬢ちゃんも…」
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