捜査の方向性

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捜査の方向性

 昨日の事件の『あらまし』について確認した後、私は気になっていた事を聞いてみた。 「()る力については、お二人とも、ご存知だったのですね」 「はい。国家機密になっておりますが、有事の際に対応出来る様、各団の団長は皆、知っているものと思われます」  オーベル様の話に、少し安堵するとともに、私はお願いを口にする。 「出来れば、私が使えるということは内密にしていただきたいのですが‥‥‥」 「もちろんです。犯人も、私達が魔術が使われていることに気がついているとは、思ってもいないでしょう。必ずや、捕まえてご覧にいれます」 「それで、魔術による呪いがパウンドケーキに掛けられていたということでしたが‥‥‥。そうなると魔術師の誰かが犯人ということかしら?」  さっき聞いた話によると、禁忌の魔術には呪いの魔術というものがあり、対象物に呪いを掛けると食べ物の内側から毒を発生させることが出来るという事だった。術自体は、少し離れている場所からでも対象が分かれば発動する事が可能らしく、呪術が使われた可能性は高いとのことだった。 「その可能性は否定できませんが‥‥‥。実は魔術具がなくても魔術を使える方法があるという噂が、国外で広まっている様です」 「そんな話、私は聞いてないぞ!!」  興奮するエリオット様に、オーベル様は困惑しながらも謝った。 「申し訳ありません、殿下。この事は、真偽の程が分かりかねる状況だった為、ハッキリするまで、陛下に『内密にせよ』との命を受けておりました。ですが、今回の一件で陛下も隠すことは得策ではないとお考えになったのでしょう。話してもよいとの仰せでした」  要するに、無駄に不安を煽りたく無かったってことね。そうなると、犯人を特定するのは厄介だわ。誰にでも犯行が出来てしまいそうだもの。 「ライナス。犯人に誰か、思い当たる人物はいないのか?」  エリオット様にそう問われて、ライナス様は困った様な顔で答えた。 「思い当たりません。城に自由に出入り出来る人物は限られておりますが、それでも3万5000人は下らないでしょう」 「そうだな‥‥‥」 「エリオット様。他国からの潜入を想定されているのでしたら、国外と繋がりの深い者に対象者を絞ってみてはいかがでしょうか?」 「それで3分の1くらいに対象者を減らせるか。ライナス至急リストの作成を。出来れば国外と繋がりの深い者から順にリストにあげていってくれ。オーベルは、国外の魔術について出来る限り情報を集めてくれ」 「「はっ!!」」 「アイリスは、護衛をつけるから城内の見廻りをお願いしても構わないか?」 「見廻りですか?」 「ああ。識る力を使って、変わった魔術の動きがないか城の中を見て欲しいんだ。何かあれば、すぐに知らせて欲しい」 「承知致しました」 「私は、もう一度、現場となった中庭を確認してから、今日の事を陛下へ報告してくる」  会議は1時間でお開きとなった。私は少し不安になりながらも自分の部屋へ戻り、王妃教育を受ける準備をしたのだった。
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