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賠償金
「戦争を止めに行っている間に、牢屋で司教が自害してしまってね。オーベルに、自白剤の使用許可を出したのだが、戦争の件でゴタゴタしているうちに、自害されてしまったらしい・・・このままでは証拠もそろわず、我が国は『敗戦国』となってしまうだろう」
「無駄に死者を出さなかったんですもの。戦争が中止になって、かえって良かったと私は思っております」
「えっ・・・そうだな」
「でも、奴隷が普通に売り買いされている国なのでしょう?もし、「民を奴隷に差し出せ」何て言われたら、放っておけませんわ。それこそ戦争しかないと思うんです」
「アイリスは相変わらずだな。戦争が無くなって良かったと・・・今、言っていたではないか?」
「『それはそれ!これはこれ!』ですわ。自国の民が傷つけられるような事だけは許せません」
「ふふっ、アイリスらしいな」
エリオット様は笑うと、私の髪を撫でていた。
「アーリヤ国の新王は、前国王と違って『賢王』と呼ばれているらしい・・・おそらく奴隷などとは言わないだろう。ただ、損害賠償は請求されるかもな」
「他国のスパイが絡んでいて、今回の事件が起こった事とか・・・証明できなくて悔しいです。エレナ様からは、何か情報を得られませんでしたの?」
「彼女は農村から連れてこられた際に、脅されてスパイになったみたいなんだ。末端の人間だったため、ほとんど何も知らされていなかったらしい・・・それに『王族が城内を管理出来ていなかった』と言われれば、それまでに過ぎない話なんだよ。上に立つものは、全てに対して責任があるんだ」
「本当に悔しいです」
「損害賠償の件についてだが、頭が痛いことに、宰相率いる元老院の方々は、「国が支払える額は決まっている」と言っていてね」
「そんな・・・国王陛下は、何と仰っているのです?」
「私に全て任せると・・・「この一件を丸く治めてみよ」との仰せだった」
「エリオット様お1人に?!・・・それは、あんまりではありませんか」
「本当に頭が痛いよ・・・アイリス、それで考えたんだが・・・政策を見直すとかではなく、思い切って考え方を変えてみることにしたんだ」
「え?」
(大丈夫なのだろうか?政策を取り止めて、一体何をすると言うのだろう?・・・いや、エリオット様なら、心配はいらないと思うけれど・・・)
そう言ったエリオット様は、お茶を一口飲み黙り込んだ・・・しばらく無言でいるため、余計に続きが気になってしまう。
「・・・・・・家宝を探そうと思う」
「え・・・家宝?」
「正直なところ、損害賠償がいくらになるか分からない。我が国の国庫運営状況は知っての通り、もともと赤字スレスレだ。賠償金額によっては、我が国は破綻するだろう」
うーん・・・『金策が、どうしても必要』ってことは分かったけど、私からしてみれば良くやりくりしてると思うのよ。前世で暮らしていた日本なんて、負債だらけだったしね。
「それは・・・大変ですわね」
「アイリス、家宝とか王族の遺産とか、気にならない?」
エリオット様は、そう言うとポケットから古びた紙切れを取り出した。
「これは?」
「『家宝』の場所を示す地図だよ」
「!!」
そう言うと、エリオット様は笑っていた。
それって、それって、つまり─────『宝探し?!』
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