うんこ

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 ズボンにうんこがついていた。ヒザ下のあたりに、少しだけ。たぶん取替をしているときについたのだろう。  父の介護をしているとたまにあることなので、そこまで気にしなかった。  新しいズボンに履き替えようとしたその時。    うんこが蠢いている。  よく見るとそれは人間のような形をしていた。2センチ位で、私のズボンにしがみついている。  不意に、そいつがこちらを見上げた。  目が合った。体が固まる。 「あのぉ、申し訳ないのですが」  小さな人間が小さな声で話し始めた。 「水場を貸してはいただけないでしょうか」  心臓がひと呼吸遅れて跳ね上がった。  これはなんなんだ、生き物?あ、妖精か何か?でもなんでうんこまみれ?  理解の追いつかないまま、私は機械的に洗面所に行った。  うんこまみれのそいつを手の平に乗せ、チョロチョロ出した水に近づける。するとそいつはわしわしと激しく洗い流し始めた。よっぽど嫌だったんだな。そりゃそうか。
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