ある画家の告白

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 最初は恋人だったわ。最愛の人だった。でも殺したの。  そうすることで、私は深い悲しみに浸れた。不幸であることが私の原動力なの。  お陰でいい絵が描けたわ。でも悲しみって薄れていくのね。しばらくするとまた描けなくなった。  次は親友。彼女は長年私を応援してくれて、恋人が死んだときも一緒に泣いてくれたわ。本当に大好きだった。だから殺したんだけどね。  この頃から、貴方は私のファンだったのね。1ミリも疑われないからおかしいと思ったのよ。  自分の母を殺したところで、心が動かなくなってしまったわ。大スランプに陥ったのもこの頃ね。暫くして、貴方は私の前に姿を現した。  そして私に絶望を与えてくれた。世界を滅ぼすという絶望を。  私は不幸で満たされた。その喜びに震えたのは今でも覚えているわ。  それから貴方の為だけに絵を描き続けた。もう何百年とね。  でも私、最高の不幸が欲しくなっちゃった。  だから、さようなら。悪魔の殺し方、ようやく知れたのよ?
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