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「……俺はさ…… 長男としてお前の助けになってるか?」
「今頃どうしたの? 兄さんらしくないこと聞いて。俺が花兄さんのところに養子になったこと、まだ心配してたの? 」
「いや、ちょっと気にかかって」
「何度も言ったでしょ? 宇野の家に拾ってもらって良かったって今でも本当にそう思ってるんだよ。宇野の家族もとっても良くしてくれたもん。あれだけ家族が多かったから宗田の家で引き取ってくれたけど兄さんとは今でも兄弟だよ。いつだって助けてくれる…… 入社して兄さんがいたのにはホントに驚いた! 心強かったよ、本当に。兄弟3人で働けたの、幸せだって思った。ね、なにをしてくれたかってことじゃないよ。2人がいてくれるってこと。それが俺には一番大事なことなんだ。それに本当のお祖母ちゃんも見つかったしね」
なにをどう言えばいいのか。今大混乱の真っただ中にいるのは哲平と花だ。このまま話を続けられない、2人きりで話したい。
「もう時間だな。また来るよ。悪いな、ちょっとしかいられなくて。蓮ちゃんによろしく言ってくれ」
花は一言も話さない。というより、話せない、衝撃が強すぎて。
「分かった」
「そうだ、桜井はもう来ないが誰か面倒なのが来たら言えよ。こっちでなんとかするから」
「さくらい、さん?」
「ああ。締めといたし、こっちでは面会禁止になってる」
「あの、さくらいさんって、誰?」
もう限界だった。花はガシッとジェイを抱きしめた。
(泣いちゃだめだ、ジェイはなにがどうなってるか分かってないんだから)
ただきゅっと抱きしめていた。
「兄さん?」
しばらく抱きしめてようやく離れた。
「また……来るよ、絶対。お前も無理するなよ」
「ありがとう!」
ジェイの笑顔が苦しかった。
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