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ジェイと2人きりになって静かになった。院長の言葉を考えながら、あまりに静かでジェイを見るとぽたりぽたりと涙を落としている。
「どうした!」
本当なら結果が良かったと大騒ぎしそうなものだ。
「ごめんなさい……」
「なにが? 謝ることなんかないだろう?」
「やっぱり俺のせいでたくさん頑張って」
「怒るぞ。お前のことならわざわざ頑張るまでもないんだ。俺は本当に欲張りだと自分でも思うよ。あれもこれもちゃんとしたい。先生の言う通りだ、気づかないふりしてたと思う。でも」
ジェイの目をしっかり見る。
「俺は後悔してない。確かに今は疲れ果てたんだと思う。良くなることを考えもしなかった。そうだな……めんどくさくなってたかもしれない」
ジェイには驚きだ。『めんどくさい』は蓮が一番言いそうにない言葉だから。
「今、サボってる。本当だ、その言葉がぴったりだ。それにお前を付き合わせてる」
「蓮! 俺は」
「違うよ。付き合ってくれてることが嬉しいんだ。……違うか。一緒にサボってくれて嬉しい。もうしばらくこうやって過ごしていいか?」
「もちろんだよ!」
蓮の口から休養宣言が出た。それが本当に嬉しい。一緒にサボろうと言ってくれた。こんな風に蓮と過ごしたのは……
「コテージに行ったときみたいだね。行ったよね? コテージ」
妙な言い回しに引っかかった。
「行ったよ。お前と2人で」
「やっぱり! さっき浮かんだんだ、暖炉が」
(忘れてたのか……)
こうやって、どの記憶が抜け落ちていたのかが分かるのはいい方なのだろう。それが分かったのはジェイが自分で言ったからなのだから。
「あの時は……サボったな、お前と。雪の中でセックスして」
「してないよ! なんてこと言うの!?」
真っ赤になったところを見るとその記憶は確からしい。
「なんだ、忘れてるみたいだから言ったのに覚えてたか」
「変態蓮と一緒にしないでよね」
「素っ裸でコテージの中を走り回ったヤツに言われたくないな」
「そんなことしてない!」
「したよ、お前と駆け回った」
(これは……ほんとに覚えてないんだな?)
「ホントにそんなことした?」
ジェイの顔は真剣だ。
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