立て直す

5/17

565人が本棚に入れています
本棚に追加
/222ページ
   2人が帰ってからしまったと思う。 (コーヒー淹れてやればよかった)  自分でコーヒーを淹れるのは気分が良かった。昨日は味わって堪能した。まともなコーヒーは最後にまさなりさんのところで飲んだきりだ。言われたわけじゃないが、あまり濃いのはいけないだろうと自分で濃くならないようにセーブしている。  今日はサンルームに2時ごろ行こうと思っていた。そこへ2人が来たからすっかり忘れてしまった。今度来たら飲ませてやりたい。  夕べジェイから来ていたメールを再度読む。つい笑ってしまう。それはメールになっていなかった。発信は午前1時過ぎ。 『もう寝てるよね。蓮はすごいね朝から働いてこんな遅くま』 (このまま寝落ちたんだな。よく送信ボタンを押せたもんだ) そして、今朝の分。夕べのメールを読んだ後に届いた。 『おはよう! 夕べはごめんなさい、寝ちゃった。また後で送る!』  時間は6時13分。どう見ても寝坊したようにしか見えない。6時半の開店に滑り込んだに違いない。  そして哲平と花が来ている間、つまりランチ後の休憩中。 『ごめんね眠いからちょとねるね』 (それでもメールをくれるんだからお前は偉いよ)  そこで褒めるのは愛あればこそだ。あまり長い返事を書くとジェイは自責の念を抱くだろう、そう思うから自分も短めに返事を返す。 『俺は元気だぞ、心配するな。火傷したらすぐ冷やすんだぞ』  ジェイがうっかりやりそうなことを心配する。今度はいつメールが来るか。それはそれで楽しみではある。  コーヒーの件では実はまた腹が立っている。昨日はコーヒーデビューの日だった。空が青くて、ガラス越しの光を浴びながら飲みたいと思った。それで思い切ってサンルームに行くことを決めた。  丁寧に豆を挽き、コーヒーを淹れる。味の研究はまだ出来ていないが、自分で淹れるのだからそれだけで美味いだろう。カップはコーヒーがサーバーに落ちる間悩みに悩んで比較的穏やかな緑を選んだ。 (そうだ、使った後洗って明日も緑にすればいいんじゃないか?) ちょっと姑息なことを考える。  それでもカップを使わないという選択はしない。胡麻化そうというちっちゃな反抗心は持っているが。  ハンドタオルで包んでいった。気恥ずかしい。花柄を見られたくなくて端の方の席を選んだ。 (俺だってデリケートなんだぞ) きっと誰も信じないだろう。  
/222ページ

最初のコメントを投稿しよう!

565人が本棚に入れています
本棚に追加