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次の日は快晴で、気持ちのいい空だった。
「河野さん、今日は外を散歩してみますか?」
「外に出ていいんですか!?」
「ええ。でも今日は車椅子で。月曜、起き上がれませんでしたから抵抗してもダメですよ」
検温に来た森下さんが笑う。今日は彼女が担当だから蓮はほっとしている。
「11時に昼食ですから12時にご案内しますね」
「もしかしたらジェイが来るかもしれないんです」
「何時ごろですか?」
「まだ時間は決まってなくて。それで散歩なんですが」
森下さんは心得たように頷いた。
「いいですよ。いらしたらご連絡ください。無理なようでしたら私がお連れします。明日からまた曇るんです。だから出るなら今日の方がいいと思います」
「ありがとう!」
久しぶりの外だ。
(ジェイと歩きたい)
厳密にいえば車椅子なのだが、この際なんでもいい。ジェイと外に出られるならそれでいいと思う。
朝食は思ったより食べられた。
「お散歩の話の効果、出ましたね。本当に外に出たらもっといい状態になると思いますよ」
そうだと思う。言葉だけでこれだけ元気になれた。外に出たらずっと気分が良くなるに違いない。
自分から連絡を取るのは焦らせるだろうと思ったからジェイからの連絡を待った。そばにあったらついかけてしまいそうだから、携帯をサイドテーブルの遠めに置く。
待ちに待った携帯の着信音が聞こえた。8時半だ。
『おはよう!』
「おはよう。いいのか? 店は」
『最初に聞くのは店のことなの?』
声で分かる。すでに膨れっ面だと。
「そんな顔するな」
『してないよっ…… どんな顔?』
「ぷっくんぷっくんしてるだろ」
『……見えるの?』
(たまんないな、お前は)
「それで? 来れるのか?」
『行く! えっとね、源ちゃんが1時前には出ていいって! もうランチのお客さんも下火になってるから』
「そうか!」
思わず声が弾む。
『でもね、そっちを5時に出ないと』
「そんなにゆっくりできるのか?」
『うん! バイトの人が1人決まったんだよ。フロア専門で4時から10時。だから大丈夫』
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