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「結城ちゃん、眉間にしわ寄ってるよ〜」
指摘された眉間のしわを右手で伸ばしながら、隣に座った2つ年上の先輩の里崎に目をやる。
「ハラペコとか?」
「空いてません」
チラリと時計を確認すると、まだ11時だった。お腹は空いていないけれど、始業してから2時間しか経っていないのに、疲労度は120%。
今朝のゴミ騒動から、どうも調子が悪い。出社直後、トラブルに巻き込まれてフォローをする羽目になったり、自分自身も小さなミスを連発している。
ミスを繰り返す度に、だんだん顔が険しくなっていくのが自分でもわかっていた。けど、ミスして笑顔で仕事なんて出来るわけない。
そんな子が同僚にいたら、きっと舞は許せないだろう。
「でもさぁ〜、怖い顔しながら仕事をしてると捗らなくね?」
「この顔は生まれつきなんです」
つい強めの口調でピシャリと言い放つと、気をつかってくれた里崎が苦笑いしながらポリポリとこめかみを掻いた。
――しまった。またやっちゃった。
子供の頃から可愛げのない子、と言われていた。
愛想はよくないし、曲がったことは大嫌い。自分のペースを崩されるのは、もってのほかで、協調性の欠片もない。
学生時代のあだ名は、マイマジコ。
これは、陰で言われていたのだけれど。
性格を表すように漆黒の髪を黒いゴムで1本に結び、前髪は横に流してピンで止め、髪の乱れ、服装の乱れは皆無。
同じ年代の女の子のように、もう少しオシャレをしてもいいのかもしれないけれど、どうも似合う気がしないから、つい無難な新入社員のようなリクルートスーツを着ている。
これも、真面目に見られる所以かもしれない。
「もー! かわいい顔してるんだし、そんなこと言わないのっ! ちょっとは息抜きしよ。はい、これ」
そんな奇特なことを言うのは里崎くらいだな、と思っていると、テーブルの上にチョコが置かれた。
「これ……」
「ほら、甘いもの食べると元気になるじゃん?」
薄茶色の髪の毛を掻き上げながら、照れたように笑う。
年上なのに、八重歯のせいなのか若干幼く見える。そして、きっとこういう人は舞と違っていつも日向の人生を歩んできたに違いない。
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