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「里崎さんがモテるのわかる気がします。給湯室で、女性社員がカッコイイって言ってましたし」
「へぇー、俺のことカッコいいって言ってくれてんの? じゃあ、結城ちゃんもそう思う?」
「いいえ。私のタイプではありませんので」
「うわぁ〜、手厳しい。俺は、こんなにも愛情かけて結城ちゃんを育ててるのにさぁ~」
視線を上げて一瞬窓際の席を見た舞だったが、里崎に視線を戻す。
どちらかというと大人の色香があって、真面目で頼りがいがあって几帳面な人が好ましい。
舞の理想を具現化したような人が、この部署にいる。
三澤商事・営業二課の三枝課長。舞の直属の上司だ。
仕事が出来るのは当たり前だが、なによりシャツも糊付けがきちんとされ、スーツにしわひとつ無い。
それに、髪の毛も後ろに流して整髪料で固めていて、乱れたところを見たことが無いのだ。
きっちりかっちりが大好物の舞にとって、三枝は理想の上司であり、見た目も理想そのものだった。
――今日もやっぱりかっこいい。
「ちょっと、結城ちゃん俺の話聞いてる?」
「聞いてます。里崎さんには、感謝してますよ。でも、それとこれとは別なので」
可愛げのない言い方になってしまったな、と眉尻を下げ里崎を見ると、シュンッと肩を落としている。目もウルウルさせて、まるでチワワみたいだ。
――また、やっちゃった。
モテないのはこういうところなんだな、と反省する。
眉尻を下げ、舞は申し訳なさそうに切り出す。
「……でも私、里崎さんのこと頼りにしてますので」
これは本当だ。
こうやって少し強く言いすぎるのをさりげなくフォローしてくれて、他の社員との潤滑剤になってくれている。
さっきまで切なそうな顔をしていた里崎が、「うん。めいいっぱい頼っていいからね!」と、満面の笑みを浮かべた。
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