◆最悪な一日◆

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* 「はぁー、疲れたぁ」 お風呂から出た舞は、バスタオルで髪の毛を拭きながらリビングのソファーに腰を掛けた。 月曜日だというのに、朝から嫌な気分になって仕事もトラブル続きで残業もあって……最悪だった。 唯一の癒しは、三枝部長。 今日も麗しいお姿を拝見出来て、それだけが救いだった。 もちろん、里崎にも救われた。 チャラいイメージがどうしても先行してしまうが、自分にはない観察眼を持っているところは、尊敬に値する。 いい社員に囲まれて、職場は恵まれていると思う。 ただ、今日は朝からケチがついてしまったが、業務を終える頃には精神的にも業務的にも盛り返したはずだ。 このままあと4日、なにごともなく1週間が終わればいい。 流しっぱなしにしていたテレビのニュース番組。髪の毛をドライヤーで乾かして、そろそろベッドに行こうとリモコンに手を伸ばした。 すると、舞がテレビを消すのと同じタイミングで、ガヤガヤとした大きな声が聴こえてきた。 息を潜め耳をそばだてていると、お笑い番組のようだった。 時計を見ると、23時過ぎ。深夜のボリュームではない。 確かここは、単身者用の分譲マンションだったはずだ。学生の入居はごく一部と聞いていたが、そのごく一部が隣の部屋だというのだろうか。 不動産屋は、そんなことは言っていなかった。 テレビの音と笑い声が交互に響く。 30分ほど我慢してみたが、少しも静まる気配がない。 木造じゃないから騒音もそんなにないという触れ込みだったはずだ。それなのに、この仕打ちは契約不履行にあたいするのではないのだろうか。 我慢ならない! と、舞はソファーから立ち上がり玄関へと急ぐ。ドアノブに手をかけた途端、はたと気づいた。 ――あ、夜中に無用心か。 もし、隣の住人が怖い人なら。 もし、隣の住人が反社会的勢力なら。 もし、隣の住人が言葉の通じないパーティーピーポーなら…… 今日がたまたまなのかもしれない、と隣人宅へ怒鳴り込む計画を白紙に戻す。 ベッドの布団を頭から被った舞は、深夜1時過ぎまで続いた騒音をやり過ごした。
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