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コーシとセーラを無事迎え入れたララージュは、心底安心したように豪快に笑った。
「この野郎心配かけやがって!!何せお前の顔がよく分からんかったからなぁ。そっちが来てくれねぇ事にはどうにも出来ん!!」
「悪い。リコの…フェザー家で世話になってた。こいつが熱出して倒れちまったからな」
ララージュはコーシが差し出したサキのメモを見ていたが、腕を組むとじろりとこっちを見た。
「それにしても連絡の一つくらいよこせなかったのかよ」
「一度リコとここを訪ねたんだが、無下に追い返したのはそっちだぜ?」
「あぁ?お前の名前なんか聞かなかったぞ?フェザーのお嬢さんなら確かに来たが、なんかのお土産を置くとすぐに帰ってったぜ」
コーシは舌打ちをすると毒付いた。
「あいつ…」
ララージュはセーラを覗き込むとにやりと笑った。
「へぇ、中々可愛らしい嬢ちゃんじゃねーか。何から逃げて来たんか知らんがしっかり守ってやれよ。
お前らの部屋はこの上の空き部屋だ。サキが来る時はいつも使ってる部屋だからそれなりのもんは揃ってるはずだぜ」
「ああ。助かる」
コーシは礼を言い、さっさと背を向けた。
ララはその背中を見送ると嘆息して腰に手を当てた。
あの意志の強い眼差し。
そして誰に対しても物怖じせず己を貫くスタイルは、若い頃のサキにそっくりだ。
「あいつに似るなんざ、いいんだか悪いんだか」
独り言を漏らしていると、仕事仲間達が顔を出した。
「ララージュさん!客だぜ!」
「今度は誰だよ!!」
案内の男を押しのけると、その客はずかずかと上がり込んで来た。
「よぅ、久し振りやな」
ララージュは顔を思い切りしかめ、どっかりと椅子に座った。
「M-Aか…。おまえら揃いも揃って何しに来てんだよ。カヲルなら歓迎だが、お前の顔は拝みたくないぜ」
「俺かてわざわざこんなとこ来たないねん。ここにカヲルも来たんか…」
二人を取り囲む男たちはハラハラと見守っていた。
ララージュとM-Aは、昔から犬猿の仲だ。
サキを挟まなければ普段は近付くこともない。
だが悪態をつきながらも、ララージュは見えない事態の深刻さを感じ取った。
「いい加減何が起きてるか説明しろよ。ただでさえ最近若者が妙に荒れてる上に封鎖で治安も乱れてんだ。原因があるなら教えろ」
「なんで俺が教えなあかんねん。サキがお前に何も言わんのはな、お前に噛ませると余計ややこしなるからや」
「何だと!?」
「お前はただこの商業区のゴロツキに目を光らせておいたらええ」
ララージュは椅子を蹴倒して立ち上がった。
「俺の仲間になんか文句でもあんのかよ!!」
「商業区は常に人が入れ替わる。金になびきやすい奴も多い。馬鹿な真似してこっちに迷惑かからんように、よう見張っとれ」
「てめぇ!!」
M-Aに掴み掛かろうとしたララージュを、周りの男たちが必死で止めた。
「ララージュさん!!ダメですって!!」
「だぁっとれ!!今すぐこいつを叩き出す!!離せおまえらぁ!!」
M-Aは余裕めいた笑みを浮かべた。
「じゃあな。もう二度とここには来ねーから安心しろや」
「今度来たら頭のてっぺんから塩ぶちまけるぞ!!このクソ野郎!!」
悠々と煙草を取り出し火をつけた男は振り返りもせずに部屋を出て行った。
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