決着

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階段を降りきると、そのまま狭い通路に入る。 コーシは途中に幾つもある部屋を調べたが、何処にも人の気配はなかった。 「セーラ!!セーラ、どこだ!!」 力の限り声を張り上げても反応はない。 部屋には一つ一つ檻が設置されており、この中にセーラがいたかと思うと気が狂いそうになった。 「くそっ!!広い!!まだ地下があんのかよ!!」 更に地下に伸びる階段を降りると、また狭い廊下と沢山の部屋があった。 その一番奥まで行くと、そこは手術室になっていた。 真ん中の手術台の周りには、見覚えのある薄水色の髪とメスが何本か散らばっている。 「…うそだろ」 もう探せる部屋はない。 セーラは、どこにもいない。 「…っくそぉ!!」 壁を殴ると、跳ね返った音にハッとした。 もう一度叩いてみると、やはりこの先に空間がある音が返る。 コーシは迷わず近くの椅子を手繰り寄せると壁に向けて思い切り振り下ろした。 薄い壁はひしゃげ、思った通り隠し通路が伸びていた。 「セーラ…!!」 コーシはその通路に駆け込んだ。 ———— フラッガは施設の全てを管理する隠し制御室まで来ると、扉にロックをかけた。 降ろされたセーラはすぐに逃げ出そうとしたが、指紋認証型のロックはびくともしない。 「出して!!ここから出して!!コーシ!!」 「そう喚かなくても今から会わせてあげるよ」 特大のモニターを起動させると、コンピュータを立ち上げる。 モニターは明るく光り、入口や外、そして沢山の部屋を映しだした。 「あぁ、やはりもう始まってるね」 外を映すカメラは、そこで繰り広げられている乱闘を明確に捉えている。 取り囲まれながらも暴れるサキに、フラッガは興奮気味に食い入った。 「何をぐずぐずしてるんだ。早く…、早くサキを殺せ」 だがそこにコーシの姿がない事に気付く。 「…おかしい。彼が来ない事はないと思うのだが」 あちこち画面を切り替えていると、廊下を駆け抜けるコーシの姿が映し出された。 「コーシ!!」 「くっ…、こんな所まで鼠が入り込んでるじゃないか!!地下階段への扉を閉じて毒ガスで駆除してやる!!」 パネルに手を伸ばし扉を閉じるよう打ち込んだが、その手にセーラがかじりついた。 「やめて!!」 「きさまっ…!!この、離せ!!邪魔をするな!!」 「いや!!コーシには何もさせない!!」 「この…!!」 フラッガは忌々しげにセーラを突き飛ばした。 打ち込みを再開し扉を閉めたが、よく見ればコーシはこっちが揉めている間に既に地下へ降りて来ている。 「くそっ!!こうなったら仕方がない。ここまではしたくなかったが…」 フラッガはパネルにまた一心不乱に打ち込みを始めた。 床に転がったセーラは立ち上がろうとしたが、体が傾いでまた倒れ込んだ。 「あ…、足が…」 足だけじゃない。 体が思うように動かせない。 セーラには分かる。 もう、自分は壊れかけているのだと。 モニターを見上げれば、必死で何かを叫びながら部屋を探し回るコーシがいる。 音なんかなくても、自分を呼ぶ声が聞こえた。 「…お願い、コーシを守るまでは、動いて!!」 フラッガは全ての打ち込みを完了すると最後に赤いボタンを押した。 モニターの画面は映像を全て消すと、代わりに大きく数字を映し出した。 それは滑るように数字が減っていくカウントダウン。 「これでいい。あと十分でこの施設ごとこの辺一帯全てが吹き飛ぶ。すぐに出るぞ」 動けないセーラを掴み上げようとしたが、セーラはその前にフラッガの足にしがみついた。 「この…何を!?」 「行かせない…。それを、止めて!!」 「貴様、いい加減にしろ!!」 思い切り蹴りを入れられたセーラは扉の近くまで吹き飛んだ。 「うぅ…」 「はぁ、はぁ…、さぁ、行くぞ…」 もう一度手を伸ばそうとしたが、その時ロックをしたはずの扉が激しい音を立てた。
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