決着

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サキはM-Aとカヲルと共に地下への階段を降り、手分けしてコーシの姿を探し回っていた。 だが更に地下へと続く階段はフラッガが閉じたままだ。 くまなく探しても人影ひとつ見つからない。 「コーシ!!どこにおるんや!!」 「M-A、そっちは!?」 「おらん!!たぶんどっかに隠し通路があるんや!!」 三人が合流すると、部屋中が赤く点滅し始めた。 「な、なんやこれは!?何が起こったんや!?」 「…あれだ」 サキは壁の上部に設置されてるモニターを顎でしゃくった。 そこには爆破予告とカウントダウンが表示されていた。 「爆破やと!?あと三分切っとるやないか!!コーシは!?あいつほんまどこ行きよってん!?」 張り詰めた空気が三人に襲いくる。 サキは目をふせると、ゆっくり二人を振り返った。 「…コーはどこにいる?コーに何かあれば、俺はお前を許さないぜ」 その目は仄暗く、声は押し殺したように低い。 M-Aは仰天した。 「な、何を言うてるんや、サキ!?」 「気付いていないふりをし続けられたら、俺はお前を…殺さずにすんだ」 サキは銃をゆっくりM-Aに向けた。 「サキ!!」 「カナンにセーラを拐わせようとしたのもお前。コーシがリップスタウンに向かったことも、俺らの動きも、全部フラッガに流していたのもお前だろ?」 冷酷な目を細め、その名を呼ぶ。 「カヲル」 M-Aの真後ろでは、カヲルが真っ青になり立ちすくんでいた。 「な、何をアホなこと言うとんねん!?カヲルがそんなことするはずないやろ!!」 サキに食ってかかったが、カヲルは震える声で言った。 「サキは、気付いていると思っていた…」 M-Aは驚愕を顔に貼り付けるとカヲルの肩を掴んだ。 「ど、どういうことやねん!?なんでお前がフラッガなんかと!?いつからや!!」 「…」 「ちゃんと言えカヲル!!」 カヲルはM-Aの手を払いうつむいた。 「カナンを洗っていた時だ。カナンは、やはり金を掴まされてサキに近付こうとしていた」 「それがフラッガか!?」 「いや。そいつはただの流れ者だ。だが、あたしはまだその裏にも誰かがいる気がして…。そこから独自で辿って、その時フラッガに接触した」 「なんやと!?」 「あたしは…最初からコーシがヒューマロイドにのめり込むことを案じていた。そして、同時にフラッガにスラムをいじられる事もだ。だから、個人的に取引をしたよ」 ここまで聞けば後は予想がつく。 カヲルはサキがしようとしていたように、セーラを返す代わりにスラムから一切手を引けと迫ったのだろう。 フラッガは是と言い、カヲルはカナンを再び使ってレイビーでセーラを捕らえようとした。 だがそれは失敗。 フラッガは失敗を巧妙に責め、今更手を引こうにもお前はもうサキを裏切っていると脅し、今度は自分が動くからと情報提供を求め続けたのだろう。 そうして気が付けばいつの間にかカヲルが利用される形になっていたのだ。 サキは無表情のままカヲルに銃を突きつけている。 M-Aは絶句した後で怒髪天をついた。 「なんで…なんでそんな勝手なことしたんや!!」 カヲルはキッとM-Aを睨みつけると、滅多に出さない大声で言った。 「それがスラムの為だと思ったからだ!!お前もサキも、どうしてもコーシに甘い!!フラッガをあそこで野放しにする事は、あたしには出来なかったんだ!!」 カヲルの想いは本物だ。 それを知っているからこそ、カナンを締め上げ情報を得ていたサキもずっと知らぬふりを貫いていたのだろう。 それでも…。 「カヲル」 サキは向けていた銃を下ろした。 だが続けて出したのは、血濡れた二本のナイフだ。 M-Aはサキの本気にぎくりとした。 「M-A、どけ」 「どけるかいな!!」 一本だけナイフをカヲルの足元に投げて寄越す。 「カヲル。コーはどこにいる?」 「し…知らない。あたしは…」 M-Aは堪らずカヲルを背に庇った。 「サキ、俺らはずっと三人でスラムを支え続けてきた仲間や!!ここでカヲルを殺したって何にもならんやろうが!!」 三人の間に沈黙とサイレンが交差する。 サキは表情の消えた眼差しのままナイフを握り直した。 「…俺の鉄の掟は知ってるよな。いかなる理由があれど、裏切り者はこの手で制裁を下す。例えカヲルでもな」 「サキ!!」 「M-A、俺は別に潔癖症なんかじゃないぜ?」 「サキやめろっ!!」 M-Aの叫びはまるでサキに届かない。 「俺はただの、完璧主義者なんだ」 カウントダウンが十秒を切った時、サキは床を蹴った。 その刃は確実にカヲルを捉えている。 「この、あほんだらーーーっ!!」 M-Aは床に転がるナイフを掴むと勢いよく振り上げた。
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