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「トランプさん!!」
女性の呼び声と共に、猛々しく吠える狼が数匹、道化師に飛びついた。
その迫力に圧倒され立ち尽くすジャック達。
道化師は倒れこみ、のたうち回りながら狼達に抗戦している。
「お久しぶりです!トランプさん、ダイヤです」
大勢の狼達と共に、女性が現れた。
「ダイヤちゃん!」
エースは泣きながらダイヤに抱きついた。
ダイヤもまた、トランプ夫妻の山小屋のお客の一人だった。
彼女は旦那の暴力に耐えられず、着の身着のまま逃げて来たところを、トランプ夫妻にかくまってもらい、暫く山小屋で暮らしていた。
「あの時は、本当にありがとうございました。私、エースさんに、『貴方は動物と会話ができるのね』って言ってもらって、トリマー目指すことにしたんです!」
ダイヤは、トランプ夫妻の愛犬“キング”と、お客の中で一番仲が良かった。それをエースが誉めていたのだった。
「お二人のおかげで、私独り立ちできたんです!今では、本当に動物と話せるようになりました。この通り!」
ダイヤが目配せすると、他の狼達も道化師に飛び付いた。
「良かった……ダイヤちゃん、ありがとう……」
「まさか狼まで手懐けられるとは思いませんでした」
二人の抱擁に、側にいたクラブも泣いた。しかしジャックだけはどこか冷静だった。
「なあ、今のうちに……」
その時、道化師が猛烈な雄叫びを上げると、まとわりついていた狼達を振り落として立ち上がった。
またもやエースが叫ぶ。
道化師が狼に斧を振り下ろそうとした瞬間。
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