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鼓膜が破けそうなほど大きな銃声が響いた。
弾は道化師の右腕を撃ち抜き、斧が地面にぽとんと落ちた。
「トランプさん!!」
ウエスタンさながらに銃を構えている一人の男。
「君は、スペードくんじゃないか?」
スペードも、山小屋のお客の一人だった。彼は幼少の頃から対人恐怖症で、銃などの武器が好きだったことも重なり、周りから浮いた存在だった。
大人になっても、出来るだけ人と接する機会を避け、山の中でキャンプ生活をしていた。
そこでトランプ夫妻に声をかけられ、何度か山小屋に招待されたのだった。
「トランプさんはありのままの僕を受け入れてくださった!そして、猟銃の腕前も誉めてくれた。だから今では射的の名人です。この通り」
そう言ってスペードは、道化師の左足を撃った。
再び倒れこむ道化師。
「スペードくん、ありがとう……ありがとう……」
エースはスペードを抱き締め、何度も礼を言う。
「それを言うなら僕の方ですよ」
はにかみながら笑うスペード。
しかしジャックだけはまた冷静だった。
「なぁ、どうするか、こいつ」
今度こそ起き上がらない道化師に、スペードは近づいた。そして、頭部に銃を向ける。
「もちろん、始末します」
スペードの言葉に、トランプ夫妻は慌てた。
「ま、待ってくれ!もう、充分じゃないか?動けないのだし」
「そうよ!殺すなんて可哀想。警察に……」
その時、彼らの頭上にけたたましいプロペラ音が響いた。
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