ある山小屋にて

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「父さん!!母さん!!」  空から呼びかける一人の男。 「まさか……」  叫び声を聞いて、夫妻はすぐにピンときた。  ヘリコプターが地面に到着すると、中から男が出てきた。 「ハート!」  金髪の若い青年。彼はハート。ハートもまた、山小屋のお客だった。  いや、お客というよりは、山小屋で長く暮らした住人、夫妻の家族のような存在だった。 「ハート!今までどこに行ってたの!」 「心配したじゃないか!」  ハートは、山に置き去りにされた赤ん坊だった。夫妻は彼を見つけると、山小屋に連れて帰り、自分達の子供として育てた。  しかし彼が15歳になると、突然姿を消してしまったのだ。 「ごめんなさい。どうしても二人に恩返しがしたくて、僕は街に出たんだ。頑張って働いて、勉強して……今ではこの通りさ!」  勇ましく制服を着こなし、彼は警察バッジを二人に見せた。 「ハート……立派になって」  エースはハートを力強く抱き締めた。  周りの者達も、皆泣いている。  今回ばかりはジャックも同じだった。 「……それでこれは、どういう状況なんです?」  チャンピオンベルトを腰に巻いた大柄な男。  大勢の狼を従えた若い女。  銃を構えているウエスタン風の男。  倒れている道化師。 「いろいろあったんだ……」  ジャックはそれしか言えなかった。
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