昨日を忘れても君と未来を歩めるのなら

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 俺は自分が色を持たない無機質な人間だと思っていた。  それが間違いだとは今でも思っていない。君はそんな俺を何度だって肯定した。頭で納得はできても、どうしても理解できない。それでも君は確かに俺に色をくれたのだ。  今なら胸を張ってこう言える。 ――俺に君を輝かさせてくれて、本当にありがとう、と。  俺は光になれているだろうか。目の前ですやすやと寝息を立てる君に心の中で問う。  自分を変えたいと何度も思った。でもそれは思った以上に無理難題で。変わらない自分に嫌気が差したことなんて、数える程度では収まらない。その度に君の笑顔に救われたのだと、今は心の底からそう思う。  ふと外を見る。月が綺麗だ。まるで君のように。できることならずっと輝いていて欲しい。俺に君を輝かさせて欲しい。  俺は今日、何度目か分からない、でも確実にこれまでとは違う、「本物の恋」に落ちたのだろう。なんら確証はないが、そんな気がした。
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