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私が満員電車から吐き出されるようにして足早に次から次へと用事に急かされている間、彼は街の片隅で、からすやネズミを従えて誰かが捨てたごみを拾い集めている。
ありがとう。
そう言うのはたやすいけれど私はもっともっと彼にふさわしいことばがないのかと探し始めていた。
スマホのアラームが鳴る……現実の始まりだ。
「会議、頑張るぞ!」
焼き立てのクイニーアマンを歩きながらひと口かじり、あごに付いたパンの欠片を指先で弾くと、すずめがすかさず舞い降りてパンくずをついばんで飛び去る。
ああ、いい天気。
信号待ちの間、ぐっと背筋を伸ばしてカウントダウン。
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