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彼は清掃会社のつなぎを着ていて私の記憶にあるゆたかにはなかった男臭い外見をまとっている。でも頬の柔らかさや澄んだ瞳は私のゆたかにとてもとても似ている。
「私だよ、あずさ。中学のときに同じクラスだった……」
私たちお互いに初恋だったよね。
手をつないだのも、デートしたのも、キスをしたのも。全部初めてを一緒に過ごした。
大好きで、その好きってことばをうまく伝えられなくていらいらしたり。どうしようもなくいつも自分の気持ちを持て余している私に、ゆたかは真っ直ぐな道を真っ直ぐに向かう正しさを迷いなく教えてくれた。
「あの……ごみなら受け取りますよ」
低い声。私ははっと白昼夢……といってもまだ朝の6時30分なんだけど……彼の不思議そうな表情を見て我に返った。
「人違い……ごめんなさい」
「いいんですよ。ごみ袋1つでいいですか」
そのごみ収集の彼は私から丁寧にごみ袋を受け取ると後ろのキャリアーにぽんっと投げ入れた。何か言わなくちゃ、そう思っているのにことばがうまく出てこない。
そこに近所のおばあさんが声をかけてきた。
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