『ありがとうの反対のことば』

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 初めからごみだったわけじゃない。どこかの瞬間からごみだと決めつけられて、こうして汚いものに混じってしまって捨てられる運命。ほかのきれいな物と区別されて誰にも必要とされなくなる。 「あっ、ありましたよ」  彼が私のところにごみ袋を持って駆け寄ってきた。不自由なのは左足と右腕みたいで、ぎくしゃくとした動きで精一杯急いでくれる。 「すみません!」   大慌てでごみ袋を開くと中に小さなメモ帳。生ごみの汁が染みて臭くてたまらないけど、ページにはパスワードがちゃんと記されてた。 「よかった……ありがとうございました」  私が頭を下げると彼はうれしそうにうなずいた。 「あずささんがありがとうって言ってくれて僕もうれしいです」  頭を下げたまま、その声を聞いていると、時が巻き戻る。
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