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確かに僕は女顔で背も小さく、ユニフォームから普段着に着替えていたあの時は、ちょっとボーイッシュな女の子にも見えたことだろう。だけど、問題はそこじゃない。
女の子と間違われて襲われそうになった貞操の危機も充分ヤバくてありえないことだったけれど、理不尽なのは「男だ」という事実にガッカリされた、ということだった。
男で何が悪い。女の子じゃなくて悪かったな。
実際僕は何一つ恥じることも貶められることもないのだが、その一言は棘となって僕の心の奥底に沈殿していき、その後も事ある毎に僕を刺すことになる。
女の子みたいに見えたのに女の子じゃない、それは他人にガッカリされることなのだ。
というネジ曲がった変換が拭えないまま、何度も女の子に間違われる度に、そこに一瞬でも相手の目に浮かぶ失望の色を嗅ぎとってしまうと、もうダメだった。心が底無し沼に堕ちていく感覚。
それは、ありのままの僕じゃダメなんだと、男の僕が僕であることは他人にとって受け入れられないことなんだ、という捻れた自己認識をもたらして、遅効性の毒のように僕を蝕んでいった。
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