蜂と蜜

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嘘のようなホントの話だけど。 小さい頃、洗濯物を取り込んで畳むのが僕の役割だった。まだ低学年で、出来るお手伝いの選択肢も少なかった頃の話。 庭の物干しに干してある洗濯物をカゴに突っ込んで、サンダルの足をパタパタいわせながら家の中に運ぶ。そして、一枚ずつ畳んで、家族ごとに用意されたカゴにしまっていく。それを各自がタンスなりクローゼットなりにしまう、というのがルール。 多少下手っぴでも構わないからと、自分一人に任されたこの仕事が誇らしくて、嬉々として手伝っていたことを覚えている。 そんなある日のこと。 いつものように裏返しになっている服に手をつっこんで、袖を引っ張り表に返していく。表のまま干すと太陽光にやられて服が傷みやすいのだと祖母がよく言っていた。 次々に引っくり返す作業を続けて、自分の分にたどり着いた。服の中に手を入れた途端、チクンと尋常じゃない痛みを感じた。 慌てて手を抜いたら、手首の下辺りに赤い点。 そして、突然現れたのは警戒色の黄色と黒。 蜂だった。 なんと、服の中に蜂が潜んでいたのだ。
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