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その日、僕は習い事のクラブの大会に出るために、競技場に来ていた。幾つかの市が集まって合同で行われるトーナメント形式の大会で、朝早くから夕方の日が暮れて暗くなるまで行われる長丁場だった。先輩たちは表彰式に出てしまっていて、僕たち後輩は持ち回りで二人一組になって荷物の番をしていた。
余りにたくさんのクラブが参加していて、どこも似たり寄ったりな格好と持ち物だったから、見張っていないと悪気はなくてもうっかり間違えて持っていかれてしまう、なんてことがよくあったからだ。
もう夕日もだいぶ落ちて、余韻のようなオレンジ色の西日が闇に溶け始めた頃。僕の相方である友達が、ごめん!ちょっとトイレ行ってくる!と言って、走っていってしまった。
僕たちが陣取っていたのはスタンドからは離れた場所で、人通りもなく、トイレも近くにはなかった。仕方なく一人でぼーっとしていたから、人の気配には気がつかなかった。
ちょうど胸の高さのところに棚のような台のような出っ張りが壁一面にあって、そこに腰を下ろして足をブラブラさせながら、友達を待っていた。背後からは表彰式の様子が聞こえてくる。ちょうど三位が発表されて歓声と拍手が沸き起こっていた。
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