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10年ぶりのあいつは見た目は誰?ってくらい変わったけど、中身はちっともあの頃と変わっていなかった。
あの頃と同じようにくだらない話をLi〇eで煩いくらいに送ってくる。
俺はあいつの勢いに押され気味であまりまともに返事を返せていなかった。
だけどそんな事はお構いなしに流れてくるあいつの言葉とコミカルな表情のスタンプたち。
思わず笑みが溢れる。
あいつが最初に話しかけてくれた時もそんな感じだった。
小さな一つひとつの事が嬉しくて、幸せが胸に広がっていく。
*****
時々混じるあいつのあれからの事。
あいつは高校を卒業した後地元の大学へ行ったものの俺がいなくて寂しかったと言ってくれた。地元では就職できずに東京に就職先を探したが見つからず、でも東京を離れたくなくてホストをしているという。
全ては会えるかどうかも分からない俺のためのようだった。
はっきりと好きだとは言わないが、言葉の端々に好きがちりばめられている。
10年経っても変わらないと思えるあいつの気持ち。
今度は誤魔化したりしないだろうか…?
あいつの事を想い、またあの音が鳴った。
『ぽっぺん』
ふとあいつの笑顔と共に思い出す事があった。
あいつと友だちになって初めて遊びに行った場所。グラバー園、大浦天主堂。
そして記念にと買った何の変哲もないビードロ。
あいつが吹くと『ぽっぺん!』って――――。
はっとする。
俺は押入れの奥の奥に仕舞い込んでいたある物を探した。
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