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恐る恐る巧を見た麻里ちゃんに、巧は心底嫌そうな顔をした。いつでも人にはいい顔をしてビジネススマイルを放つ彼が、苛立ったように麻里ちゃんに言ったのだ。
「あんたも。ここは俺の家でもあるから、イチャイチャすんなら外でやってもらえる」
「は?」
ここまできて、ようやく巧が言っていることを理解した。そうだ、彼は私に女の恋人がいると思い込んでいるのだ。それで、麻里ちゃんがその相手だと勘違いしているのか!
私は慌てて巧に説明した。
「巧! 麻里ちゃんは従姉妹だよ!!」
私の言葉を聞いて、彼はピタリと動きをとめる。私はなおも続けた。
「子供の頃近くに住んでて仲良くしてるの! 普段ちょっと離れたとこに住んでるけど今日はこっちに用事があったから新居に呼んだだけで……麻里ちゃんは結婚してるから!」
私が早口にそう言い終えた瞬間だった。
巧は片手で口元を押さえると、一気に顔を真っ赤にさせたのだ。
……あら、初めて見る顔だ。
普段飄々としている男が、とんでもない勘違いをしてそれに気づいた瞬間。ちょっと可愛いと思ってしまったじゃないか。
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