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「あ、もちろん他言はしてませんし……! 私は杏奈の友達というか姉みたいな立場で。安心してください、絶対に誰にも言いませんから!」
「よろしくお願いします」
巧は丁寧に頭を下げ、床に置かれていたカバンを手に取った。
「どうぞごゆっくりなさってください。今後も別にいつでも来ていただいて結構ですから。本当に、失礼をいたしました」
「い、いいえこちらこそ……」
二人は気まずそうにそう言葉を交わすと、巧はそのまま廊下を突っ切ってリビングの方へと入っていった。その背中がどこか疲れているように見えるのは気のせいだろうか。
彼がいなくなったのを目で見送ると、麻里ちゃんがはあーとため息をついた。私は笑って謝る。
「ごめんごめん、巧に麻里ちゃんがくること言ってなくて。変な誤解されちゃってたね」
「びっくりしたよお」
麻里ちゃんがフラフラと部屋の中に戻り、私のベッドにどしんと腰掛けた。力が抜けたようにそのままこてんとベッドに寝そべる。
部屋の扉を閉めた後、私は再びテレビ画面の前に腰掛けた。
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