何かが変わる

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「高杉さん、この書類チェックして頂けますか、社長に頼まれたもので明日の午前中までなんです」 「はい。そこに置いといてもらえる」  パソコンに向かって凛とした姿勢で、私はそう答えた。仕事モードの高杉杏奈だ。今は決しておにぎりのTシャツなどではなく、しっかりしたスーツを身に纏っている。ちなみにマネキン買いしたやつだ。  家であぐらをかいてコントローラーを握っている不恰好な姿勢でもなく、背筋を伸ばしてキーボードを入力していた。努力して築き上げた自分の仕事中の姿だった。  この仕事を選んだ理由はドラマで見た秘書という役割がカッコ良かった、なんていうくだらない理由だ。それでも幸運にも向いていたらしく、そこそこ大きな会社で秘書として仕事を続けられている。社長たち上司の性格はクソやろうだけど、そのほかの人たちには恵まれて人間関係も悩んではいない。  私は一旦画面から目を離す。ふうと息をついて目頭を抑えた。 「高杉さんって新婚さんなのに、こう浮かれた感じしなくてビシッとしてますよねえ……」
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