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「私惚気とかいうの苦手なの」
「クール! クールすぎ!」
クールでも何でもなく、惚気るネタがないだけなのだが。オーウェンについての愛なら一晩中語れるんですがね。
河野さんは不満げに頬を膨らませた。
「なーんか、想像つかないんですよ。高杉さんと藤ヶ谷副社長の結婚生活。超お似合いですけどね? 並んでるとこ見たことないし、結婚式もまだ考えてないっていうし〜」
「別に普通の生活よ」
「行ってきますのチューとか?」
「それが河野さんにとっての普通ってことはよくわかった」
「えー普通じゃないですか! 高杉さんと藤ヶ谷副社長の朝のチューとか超絵になる!」
「勝手に想像しないでくれる?」
鼻息荒くしている彼女に呆れながらも笑う。キスなんて、するはずもない。抱きしめることだって、手を繋ぐことすら私たちはするはずがないんだから。
もし河野さんと飲みに行ったら色々ボロが出そうだな、と心の中で心配している時だった。デスク上の携帯が光っていることに気がつく。
手に取ってみると、着信は母からだった。
「……?」
「どうしました?」
「母からなの。ちょっとごめんね」
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